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公務員への逆風は筋違いでは?

不況のたびに巻き起こるのが、「公務員の給与は(民間に比べ)高すぎる」「仕事を5時に終わって給料をもらえるなんて」「退職金が多い」などの批判ですね。
鹿児島県では一般職で6%、管理職で10%の給与カットを行い、赤信号が点滅している県の財政再建を計っているそうですし、県内市町村でも同様の動きが出ています。
最近では、阿久根市で市議会と市長の対立からで失職した竹原前市長が再出馬し、元官僚との一騎打ちの激しい選挙戦を僅差で制しましたが、竹原市長は選挙公約で市職員の大幅な給与カットを掲げていたことから、同市の半数以上の有権者が新市長を支持したことになります。

ただ、ふと思うのは、不況期に「公務員たたき」が起こる傾向があるように感じます。
国家公務員も地方公務員も、職員に採用されれば、違法な行為を行わないかぎり、定年退職までの暮らしと定められた退職金、定年後も一定の年金が“保証”されます。景気の浮き沈みで一喜一憂する民間企業の社員や自営業者からみると、「なんとまあ」ということなのでしょう。

「なんとまあ」の続きは2つあります。
1つは「いい身分だなあ」という批判です。「民間が大変な時期に、しかも自治体の財政が極端に厳しい状況にあるのに高給を取っている」と。
2つ目は「いいなあ」といううらやましさ。で、自分の子供をぜひ「公務員」それに準ずる「外郭団体」に入れたい、と願う親も少なくありません。一時、地元で高校生2人が「私は公務員~、」「私も公務員~」と鹿児島なまりで語り合う専修学校のテレビCMが流れ、子供たちがその真似をするほどでした。

先に書いたように、こうした民間人の「公務員」への感情の裏側には、多分に嫉妬心があるでしょう。
「自分たち(民間人)は不況の中、こんなに努力しているのに商売あがったりだ。なのに公務員は5時まで働いて休みも取れて生活が保証されている。退職金で家を建てたと聞くが、いい身分だ」
感情的には分からなくもありません。
しかし、不況時はこう言われますが、かのバブル経済のころはどうだったでしょう。

鹿児島はそこまでバブルの恩恵は受けていなかったかもしれませんが、民間企業に勤めていた社員、OLは毎晩のようにレストランに繰り出し、私的な飲み会の帰りのタクシー代にもチケット切り放題、給与も高くボーナスは破格。さらに、入社試験では交通費・宿泊費にプラスアルファも付いた、とか。私は当時、地方の地方で貧乏な新聞社であえいで暮らしていたため、こうしたバブリーな生活とは全く無縁でした。バブルの恩恵を受けた知人・友人に聞くと、想像つかないお金の遣い方をしています。
そのころ、「公務員」批判はあっただろうか? です。当然、税金の使い道について市民が監視する必要はあります。それと感情的な嫉妬は別。
自治体の財政の将来を考え、公務員の給与体系、雇用のあり方など、当時いかほど民間人は論議していたのでしょうか。

竹原阿久根市長の旧習を破らないと地方行政は破たんする、という危機感には共感します。
ただ、市職員の大幅な給与カット、さらには市職員で構成する労働組合に対し組合事務所を市庁舎内から立ち退くよう一方的に通告するのはいかがなものでしょう。
竹原市長は「市職員の給与水準を高くしたのは労働組合と議会のなれあいが原因」と指摘し、労働組合を「市民への背信行為を行ってきた」と痛烈に非難しています。この不況下、竹原市長の「議会・組合は市民の敵」というひとことスローガンは市民の耳に心地よいでしょう。しかし、議会も労働組合も法に沿った手続きを踏まえてきたわけで、「市民の支持」を錦の御旗にして「背信行為」「組合事務所の立ち退き」まで迫る行為には、かつて、多くの独裁者らが「分かりやすい敵を想定し、自らは善である。敵を倒せ」と国民・住民に甘美な心地良い言葉を交えていった手法を、歴史の中に思い起こさせます。

私は阿久根に住んだことはありませんので、こうすべき、とも言えません。
ただ、公務員でもよく働く人は働いています。
真夜中、鴨池新町の県庁舎前を通ってみてください。午前2時を回っても灯りが点いたフロアがいく階にもあります。過労死も出ていると聞きます。私が知る、何人かの県職員、市職員は懸命に働いていました。なかにはそうでない職員もいるでしょうし、自分の出世を最優先する人物もいるでしょう。それは民間企業でも同じです。
紋切型で批判するのは良くありません。

地方財政の疲弊は職員の給与水準が主な原因なのでしょうか?
地方の産業衰退もそうなのでしょうか?
市職員の給与を大幅に引き下げ、議員定数をカットすれば、阿久根は再興するのでしょうか?

日本の一次産業の先細りは、戦後のアメリカ経済に取り込まれたときにすでに胞子が植えつけられていました。
アメリカ型農業の大規模化推進、トウモロコシを原料とした飼料の普及、化学肥料・農薬を使った合理化・効率化…同時に起こった大都市への若者の集積化。地方は疲弊するように国家がしくんでいたのです、アメリカと組んで。

では、これから地方はどう生きるか、です。国=政府はあてになりません。常にアメリカを見ています。
地方再生をどうするか。その土地に生まれ育った者が志を持ち地方行政に携われる環境は準備しておかないと、国の言いなりになる地方官僚ばかりが増えることになるでしょう。
国にとってはそれが都合がいいでしょうが。

ともあれ、民間人は公務員に嫉妬する時間があれば、知恵を絞って自分の商売の発展、市場の開発、そして地域へ貢献し皆さんに喜ばれる商品・サービスづくりに努めましょう。そして適正な納税! 
Commented by イマガワ=ジン at 2009-06-18 23:10 x
公務員の役割は「必要だが利益が上がらず民間ではできないサービスを税金を使って提供する」ってことだと考えています。社会問題に関心を持ち、特に格差解消に力を入れるべきと考えている私からすれば補助金を出してバス路線を守ったり、公営住宅を住のセーフティネットにするなどは公共サービスの中で最も重視すべき項目かと思っています。
問題なのは官庁・役所の不祥事でそれによる被害(つまり権力の暴走力)を受けてもそれに対するチェック機能が制度面・意識面にて甘いこと。民間とはあまりにかけ離れた金銭感覚、無責任体制も悪評の一つ。
ただ公務員試験はダルい、難関すぎますからやる気うせます。
Commented by gayacoffee at 2009-06-19 01:09
イマガワ=ジンさん、ありがとうございます。
公務員の使命は「公共への奉仕」でありましょう。行政の一員として、議会が承認した事業・予算を粛々と遂行することも大切ですが、議案を策定するのも行政ですから、その際に限られた予算をいかに公共のために生かすか、といった視点が必要と思います。これまで、自分のお金じゃないといった感覚で、さほど必要とも思われない箱モノなどが造られてきましたが、背景には首長の選挙がらみ、一部業界団体のため、としか思えない事業もあり、これらが次の世代への足かせとなっています。限られた財源の中で知恵を絞れる若い世代の公務員の方々に期待したいところです。ジンさんもがんばってください。
Commented by 匿名で申し訳ありません at 2009-06-19 01:35 x
阿久根市に限らず、地方自治体のほとんどは
>市職員の給与水準を高くしたのは労働組合と議会のなれあい
となっておりまして、
職員(自治労=役人の労働組合)の思惑ばかりが
行政に反映されているのです。

本来であれば政治活動をしてはいけない公務員という身分で
政治を動かしているという実態を知って貰い、
政治を役人から民の下へ戻そうというのが竹原市長のねらいです。

そりゃ、公務員の中にはまじめな人や、そういう実態を知らない人も居るでしょう。
しかし、いざ選挙となれば、そういう人もしがらみに勝てず、
自分たちの待遇を良くしてくれる人を選び、議員や首長に当選させます。

この件に関しては、表面だけなぞっても意味がありません。
本当にどういう政治が行われているのかと言うことを
知ることで、はじめて竹原市長のねらいがわかるのです。
Commented by gayacoffee at 2009-06-19 10:39
匿名で申し訳ありませんさん、ありがとうございます。
竹原市長が投じた一石に大きな意味を感じます。これからが竹原市政の本番でしょう。阿久根市には阿久根市の事情があり「外野」の私が竹原市政をどうのと言うつもりはありません。
私が綴ったのは、不況になると公務員バッシングが出てくるように感じたことです。好況期には民間はいけいけどんどんなのに…、と。「公務員水準が民間より高い」→「民間は不況で大変なのに」という感情に移りがちな問題は、本来議会という住民から選ばれた方々が議案審査で監視されるべき。現実は与党が大半を占める議会ではなかなかでしょうけど。
全国的に労組たたきも感じます。いまの労組が日本全体の労働者の雇用状況に対応できるかは別として、労働者の権利はこういう時代だからこそ守られるべきと思います。民間では派遣切り・契約打ち切り、公務員でも「労組=市民への背任団体」となると、どうも政財界の方々が「連動」しているようです。そういう時代なのでしょうか。阿久根市民は竹原市長を選び、市長はこれから思う存分手腕をふるわれるでしょう。議会もまた市民に選ばれた方々。それぞれの立場で市政のために頑張っていただきたいと願います。
by gayacoffee | 2009-06-18 15:40 | ガヤマスのつぶやき | Comments(4)

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