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税金投入の「天パラ」が苦戦~南日本新聞

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こんなことは、正直書きたくありません。楽しい話を書きたいし聞きたいもの。ひとのあら探しをしているようで、嫌な気分になります。しかし、国や鹿児島市から補助金が投じられた“公共事業”だけに、書かざるを得ません。
鹿児島市の繁華街・天文館の一角に先月開業した複合映画館「天文館シネマパラダイス」(愛称・天パラ)について、私は計画段階で「採算性が見込めないものへの税金投入は反対」と当ブログに書きました(2010年10月29日付け・カテゴリ「ガヤマスのつぶやき」参照)。ごまめの歯ぎしりのようなブログ記事ながら、計画は再考すべきであり、映画館よりも街中の美術館・公園ではないか、と書きました。計画は規模の再検討を経て続行、開業に至りました。できてしまったものをあれこれ批判しても仕方がありません。今回はつたなくも、確実な第一歩の提案を愚考し、税金が少しでも無駄にならない策を申し上げたいと思います。

きのう付けの地元紙・南日本新聞15面に「天パラ集客苦戦」の記事がありました(上写真)。
同紙が関係者へ取材したところでは、平日の来館者が100人以下もあるなど、開業時の見込みである年間20万人(1日平均550人)を大きく下回っているそうです。周辺の商店街からPR不足を指摘する声も上がっている、と同紙は伝えます。
運営する事業会社「天文館」は、「公正な評価ができる段階ではない」との理由から観客数や売り上げを公表していないようです。同紙が関係者に取材したところでは週末が1日200~400人の来館者数で、5月3日の開業日以降、6月1日まで最多で1日約500人にとどまっているそうです。
同紙の記事は、事業会社「天文館」が今後、年配者や子供向けの映画を充実させ、集客力を高めていく予定、と結んでいます。

天文館のアーケード街にかつて並んでいた映画館が消えたのは、映画の存在価値、鑑賞の方法の変化、娯楽の多様化などで、市場原理からいうと自然の流れでした。それに反して、あえて映画館を核にした複合ビルを、しかも商業拠点としての地位が低下している天文館に建てるという事業なのですから、苦戦は当たり前でしょう。1日来館者が「最多約500人」も、もしかすると“想定内”かもしれません。
これが純粋な意味で民間事業であれば、私がブログで書くこともありません。余計なことですから。しかし、問題は、税金が使われている点です。国や鹿児島市から同事業に出された補助金は約5億9000万円で、全事業費の約4割を占めます。
納税者に対し、事業会社「天文館」は随時、採算性について報告する義務があることを忘れてはなりません。

「PR不足」との意見がありますが、私は天文館の価値そのものが問われているのではないか、と考えます。
かつて、なぜ天文館に人が集まったのか。それは天文館でなければ味わえない人ごみの華やかさ、個性ある多様な店舗、品ぞろえなどが相まって、「夢」を提供してくれたからです。
中学生は、友人同士で天文館のアーケードをぶらつくだけで背伸びして大人になった気分でした。高校生になると学校をさぼって映画館に入り、胸が高まりました。恋人同士がいまはなき林田ホテルで待ち合わせをし、昼間の喧騒が日が暮れ始めると夜の顔に変わっていきました。そこはまさに大人の世界でした。
おそらく、“天文館”なるものの崩壊は、鹿児島中央駅ビル「アミュプラザ」や鹿児島市南部・東開町の「イオン」の開業に始まるのではなく、その前から予兆があったはずです。
アーケード街に携帯電話ショップ、チェーン系の店などが出店し、次第に「どこにでもある」街に変わっていきました。それでも天文館から少し入った筋に個性的な料理店やブティックが並んでいました。アーケード内から書店がひとつ、またひとつと消えたのはちょうどバブルのころでしょうか。
私がよく通っていた店も閉まり、足が遠のきました。天文館に土地を持ってもられる方々はバブル期にテナント業でご盛んだったのかもしれません。条件のよい、全国展開する事業者にアーケードのいちばんいい場所を貸すことは商売としては当然でしょう。
ただ、天文館から個店の華やかさが失われていきました(そう私には見えました)。待ち合わせの場所であった、林田ホテルも名前が変わり、いまで駐車場になっているようです。「ようです」と書くのは、ここ数年、私は天文館に行く必要がなく、実際に見ていないからです。
そうです。個性のある店がアーケードから消え、「アミュ」や「イオン」ができて、天文館に用事がなくなったのです。私にとって、交通費と時間を使って、わざわざ行くほどの場所でもなくなりました。

「複合映画館」は、天文館の再興の起爆剤として計画されました。
しかし、以前ブログで書いた通り、なぜ「映画」なのか、「映画館」なのか、私には理解できません。

天文館近くの「マルヤガーデンズ」のシネマコンプレックスが最近観客を徐々につかんでいると聞きます。ここまでくるのに、関係者の努力は並大抵ではなかったでしょう。当店のお客様からマルヤガーデンズの映画館が発行する情報紙を見せてもらい、映画への情熱を感じました。全国ロードショーなどで大動員するような大衆受けの映画ではなく、日本だけでなく世界各国の興味深い映画を短期間に上映しているようです。関係者の情熱がようやく形になってきた感があります。

「天文館シネマパラダイス」がどんな映画を上映しているのか、私は知りません。どんな映画を選んでいるかでその映画館の方針がみえてくるでしょう。そこに哲学が必要です。映画への情熱が必要です。おそらく、それがいちばん必要でしょう。1日550人の観客に来てもらうエネルギーが必要だと思います。並大抵ではありません。
いちばん危惧するのは、「天文館シネマパラダイス」を建設するときに、お上(かみ)に頼った発想です。お役人など当てにせず、民間の底力で映画館を成功させようという誇りと試行錯誤、自問自答の中から、商店街の団結と情熱が生じ、知恵も生まれるでしょう。4割を行政の補助金でまかなうよりも、調達できる資金で建設するという“背水の陣”から、天文館という街の意味、意義を徹底的に問い直す作業があったはずです。
その作業が十分だったかは、私には分かりません。その議論を経て「天文館シネマパラダイス」だったのでしょうか…。もしこのまま低迷が続いたとき、行政への追加支援を要請するようなことがあってはいけません。行政は、自ら関わった事業を「失敗」だの「赤字」だのと認めることはありません。そういう体質です。常に「鋭意努力中」なのです。議会もまた、自分たちが承認したことを「失敗」とはしません。その結果、追加支援しがちです。これは市民のひとりとして認めるわけにはいきません。

さて、できてしまったものをどうの、こうのと批判しても始まりません。
提案です。
関係者-天文館の商店主はもとより、補助金を認めた鹿児島市議会議員、行政関係者、特に森市長には重大な責任があります。この方々には毎週最低1回、映画を観てもらいましょう。さらに、1人週10人のノルマを課し、動員を図ります。上映中は寝ていても構いません。お金だけ払って帰っても構いません。事業を進め認めた者の責任として、通っていただきたいのです。もちろん自腹で、です。
事業会社「天文館」は、これら責任を持つ人々の氏名と各人のノルマを毎月公表し、さらにその結果も翌月初めにホームページで明らかにします。もし、自らが映画を鑑賞できない場合は、その料金分を「天文館」に寄付します。課されたノルマのうちの未達成分も自腹を切って穴埋め=寄付します。
これを繰り返すうちに、ようやく行政・議会関係者も「このままではまずい。税金を使うことがいかに責任重大だったか分かった」と気付き、知恵を絞るようになるでしょう。どんな映画館にするか、という哲学も生まれるでしょうし、市民・県民が天文館になにを求めるか、天文館はなにを用意すればいいのか、も考えるようになるような気がします。
まずは足元から始めることです。決して、PRが足らないからではありません。

追記】=5日午後2時3分
「天パラ」がいかに問題の多い事業であるか背景、詳細を知りたい方は、清水哲夫さん開設のブログ「新聞テンマチ」(http://blog.livedoor.jp/tenmonkan-shinbun/archives/50990250.html)をどうぞ。
驚きます。

訂正】=10日午後7時4分
上記、記事中に「マルヤガーデンズ」の映画館をシネマコンプレックスとしましたが、映画好きの方々が集まってつくった「コミュニティシネマ」というミニシアターでした。訂正します。ご指摘ありがとうございました。
Commented by まくらざっ at 2012-06-04 15:52 x
よかったが、税金はつこわんか、採算性?ないかそいや。つごうのよか統計をつくらんか、そいがおまいたんのしごじゃらえよ どこかの密室から聞こえてきますね
Commented by 常連のNです at 2012-06-04 18:35 x
なにか、あまりの予想通りに嫌になりますね。マーケティング能力のなさに呆れます。その能力は、鹿児島市には欠片もないですね。何もしない方がいいですね、鹿児島市は。やる気も、能力もある人間を排除しているんでしょう、おそらく。後方支援だけでいいです。
 行政も本気でやれば、悪口言われましたが、株式会社神戸市とまで言われた、宮崎市長時代のようなことまでできるんですから。その後の市長が転換できなかったら、失敗しました。土地開発をやった後の値下がりと、阪神大震災の影響です。でも、今回のこの鹿児島市の失敗は、最初から予想されていたこと。責任は重いと思います。行政体でも、市、町、村レベルこそ、首長の経営センスが問われます。経営は重要です。人しかできませんから。しかも、論理とセンスの両方必要ですから。
Commented by 常連のNです at 2012-06-04 18:43 x
(続きです)マルヤガーデンズは、映画館に限らず、良い悪いは別にして、コンセプトがありますね。新しいコンセプトを出すのも企業、経営者の仕事です。失敗もするでしょうが、失敗から学んで、修正していけば、そこそこのものが出来上がる確率は高まります。行政がこういうことをして、失敗が多いのは、コンセプトはないか受け売り、失敗からの反省と修正がないことですね。
Commented by gayacoffee at 2012-06-04 20:30
まくらざっさん、ありがとうございます。
有能なる官僚は議会対策でそつのない答弁書を用意できるそうで、統計なるものはいかようにも数字をいじります。自分の腹が痛まない者はしょせん他人事でしょうね。行政も議会も。
補助金がなく、純粋な民間事業であれば応援したくなるものの、へたに税金を使ったために厳しく問われます。
それにしても、南日本新聞ももう少しメスを入れた記事を書いてしかるべき。
Commented by gayacoffee at 2012-06-04 20:38
常連のNさん、ありがとうございます。
行政マンは経営に向きませんから、民間の支援および邪魔をしなければ十分ですね。おえらい方々となれあい事業をやるとこんなはめになります。森市長も人柄は知りませんが、役人をずっとやってきた人なので、従来の行政の体質が残っているのかもしれません。お会いしたことがないため、なんとも言えませんが。
マルヤガーデンズは民間企業としてシビアに活路を模索し、哲学を生んだのだと思います。
「天パラ」もシビアにいかないと、追加支援などとなるとずぶずぶですよ。そうなりかねませんからね。
ここはひとつ、市長以下、行政マンもノルマを掲げて、補助金5億9000万円分を自分たちで穴埋めしてもらいましょう。もちろん市議の方々もです。責任は大きいです。
Commented by 常連のNです at 2012-06-04 21:58 x
こんなことをするから、大阪市長のような人間がまともに見えてしまうんですね。原発の継続運転を求める福井県知事も滑稽ですが。
鹿児島のマスコミは弱いでしょうから、市民団体が追及するしかないでしょう。
Commented by gayacoffee at 2012-06-04 23:03
常連のNさん、ありがとうございます。
大阪市長も、マスコミ受けする叩きやすいところを突いていますね。巧妙と言うか。
原発再稼働の問題は、大きな分岐点なのでしょうが、あいまいなる日本人は将来への機会をみすみす逃しそうです。
Commented by Ex-Tannyaman at 2012-06-05 08:38 x
http://blog.livedoor.jp/tenmonkan-shinbun/archives/50990250.html には、(株)天文館の前身である(株)TMDと経産省との打ち合わせに関することが掲載されています。この古い記事のみならず、最新記事もおもしろい。
Commented by gayacoffee at 2012-06-05 11:21
Ex-Tannyaman さん、ありがとうございます。
早速アクセスをしてみます。貴重な情報、いつも感謝いたします。
Commented by Ex-Tannyaman at 2012-06-05 16:11 x
http://www.office432.jp/?p=2 もどうぞ。
bonn1979さんも訪問なさっていますね。
Commented by gayacoffee at 2012-06-05 20:28
Ex-Tannyaman さん、ありがとうございます。
清水哲夫さんの雑感的ブログですね。おもしろく読んでいます。
Commented by 茉莉花 at 2012-06-10 16:21 x
おっしゃってることに賛成の意見ですがちょっと間違いがきになるので訂正させてください。マルヤガーデンズにある映画館はシネマコンプレックスではありません。コミュニティシネマという映画好きの市民の集まりが作った38席のミニシアターです。もちろんマルヤガーデンズのコンセプトなり哲学なりといい感じでマッチして(マルヤさんの好意がなければ実現しませんでしたが)少しずつ顧客をつかんでいってるように思います。
Commented by gayacoffee at 2012-06-10 19:01
茉莉花さん、ありがとうございます。
失礼しました。映画好きの方々が集まって作ったがゆえに、とても興味深い映画を上映しておられるのですね。
記事に訂正を追記します。
Commented by Ex-Tannyaman at 2012-06-10 19:43 x
茉莉花さん、私からも「ありがとう」です。

長いこと鹿児島から離れていますので、浦島太郎みたいに感じながらブログを読んだり投稿したりしています。既にシネコンらしきものがあるというのに、なぜ、新たにシネコンだろうと思っておりました。やっと判りました! ミニシアターなんですね。関西のマイナーな盛り場にも数十年前からミニシアターがありますね。
Commented by いち映画ファン at 2012-09-22 21:35 x
初めてこのブログを拝見しました。
天パラには何度か足を運びましたが、従業員の教育もなっていないところがあると感じました。
早口の場内アナウンス、無人の有人窓口、無人の入場口。
それらは、いつもではないと思いますが、たまにしか行かない私が目にしたのですから偶然ではないと思います。
社長や支配人の姿勢が見て取れるようでした。
Commented by gayacoffee at 2012-09-22 21:52
いち映画ファンさん、ありがとうございます。
私はここ数年、天文館に行っておらず、「天パラ」を一度も訪れていないので感想を書けずにいます。
映画館で映画を観る行為は特別なもので、映画館の入口をくぐるときからドキドキするものでした。映画が好きで映画館を営んでいるか、どうかは入口で分かる気がします。
せめて行政が追加支援することがないよう、市の幹部と市議、天文館の商店主の方々は毎月ノルマを課して自ら映画を観ていただきたいものです。
by gayacoffee | 2012-06-04 15:43 | ガヤマスのつぶやき | Comments(16)

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