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逆の立場から語ってみる~「電力会社」編

相手の立場にたってものを考えてみなさい。違う目で見えるかもしれない-。
私たちは先人にそう教わるものでした。

事故当時現地入りして事故処理の全面支援に陣頭指揮をとった経営陣はおらず、福島県の太平洋側の一帯を放射能まみれにして人から暮らしをたてる土地を奪い、それでも経営陣の責任も明確にせず、されず、直接的に福島第一原発事故で辞任した経営陣はひとりもいないのに、会社が倒産することもなく、長丁場ながらも“無事”に株主総会を乗り切ることができたおカミお墨付きのチョー“優良”企業の東京電力をはじめ、全国の電力会社は、福島第一原発内でいまだ高濃度の放射能が放出され、事態が一向に収拾されないでいるにもかかわらず、経営悪化を理由に全国の原発再稼働に向けて着実に手を打っている様子です。すでに、原発擁護・推進新聞などは、政府筋として関西電力大飯原発に続く再稼働原発の名前を挙げるなど、足場を固めています。7月からは一般家庭用電気料金も値上げに踏み切る東京電力は、経営が厳しいと言いながら、東海、敦賀で原発を運営する日本原電に、昨年度発電量ゼロながら電気の卸売り代として232億円を支払うなど、相変わらず「原子力ムラ」のもたれ合いを続けています。福島の事故からなにも変わらず、なにも学ばずにいることに、いまさらながらあきれます。
こうした一連の動きを、私は意味不明、魑魅魍魎、妖怪変化、百鬼夜行、言語道断などと批判してきました。

が、先人の教えを思い出し、ここで一度、電力会社の立場で原発を語ってみることにします。もしかすると、電力会社にも三分の理があるかもしれない、という気になるのではないか、と思ったのです。

長い前置きでした。
ここで書く電力会社の立場とは、私の勝手な想定です。想像です。あらかじめ誤解のないように。

電力会社の立場で原発を語る(想定・想像)
電気は現代社会を支える最も重要なエネルギーであり、電気なくして社会は動きません。電気の供給からインフラを支えるのも電力会社および関連グループ会社のまとまりがあってこそです。台風の被害直後から被災地に入り、山間部の送電線から市街地の電柱、住宅に張り巡らされている電線を補修できる態勢を常時備えるには、健全な経営基盤が不可欠です。
今回の株主総会で電力各社側の提案した議案が承認されたことは、大多数の株主が、原発事故を乗り越えて原子力発電を継続することを支持したわけであり、企業としての社会的責務を果たせていると解釈します。
福島第一原発は大変に不幸な事故でした。企業としてある程度の投資を行い、災害への備えをしてはいました。しかし、この時期にあの規模の地震と津波が襲うとは。
災害は、もしもを想定するときりがありません。100年に一度の災害への対応と、1000年に一度の災害への対応とでは、設備投資額も大幅に変わります。一部に今回の災害を予見していたという学者の意見もありましたが、そもそもが「万全の備え」など現実にはありえないのです。
ありえない想定を、どこにもってくるか、どこでみ切るかという発想でなければ、原子力発電所などという危険性の高い施設は造れません。歓迎されないからこそ、過疎地に建設するわけで、その見返りに当該自治体ほか、関係のある政治家にも支援、助成を続けてきたのです。迷惑代ということでもあり、また地域の雇用にも貢献してきたという一面があることを忘れてはいけません。
原子力発電のメリットとデメリットは、初期投資および維持管理費に巨額が投じられるものの、発電効率の良さが第一に挙げられます。短期的な低コストとの指摘もありますが、国の政策で始められた原子力平和利用のもとで、一旦建設され稼働した原発施設は、30年、40年と耐久年数を超えるあたりまでフルに利用することができればさらに低コストとなりえます。なにせ、核分裂ですから、とどまることを知りません。
一企業として電力会社の経営基盤を健全化するうえでも、利用する一般家庭から企業、官庁まで広くインフラを含めた安定した電気の供給を実現するためにも、水力より火力よりも、現在の日本では原子力に頼らざるを得ないのが現実なのです。日本経済を動かしえる電力を安定的、長期的に供給するためにどうすべきか、であり、これは10年先、30年先の話でもありません。きょう、あすの問題でもあります。代替エネルギーが見付からないいま、原発の再稼働が現実的といえましょう。
コスト面から原発施設の災害想定をどこでみ切るかも重要でした。大飯原発が断層上にあるとの指摘もあります。しかし、日本列島で「安全」と言い切れる場所があるでしょうか。確かに断層上は危険性が高いかもしれません。
これは、電力会社が身勝手に設定した基準で造られたわけではありません。国による管理・監督、指導に基づいて、その方針にのっとって施設整備、維持管理が行なわれてきました。
今後も、電力会社は国の原子力行政の方針に従って企業経営を進めるしかないのです。水力、火力のうちはまだしも、原子力をエネルギー源に据えた時点で、発電事業事態が国策化し、当然そこに監督官庁、政治家、アカデミック、マスコミなどが集まり、“ムラ”を形成しました。原子力ムラです。
批判があるものの、国策化された時点でそうなる運命であり、これからも揺るがないでしょう。電力会社にその責を問うのは筋違いというものです。
東京電力の経営陣に対し、福島の事故に対する責任うんぬんとの指摘もありますが、前述の通り、大多数の株主が執行部の議案を承認していることから、特に別途改めて問うことはないでしょう。賞与、給与、役員報酬についての指摘も多々あります。国民感情は感情論として別に置き、私企業の経営でもあり株主総会を経たいまとしては、了承とされましょう。
Commented by 常連のNです at 2012-06-30 21:06 x
 電力会社は、あるいみ私企業ではありません。経産省の下にぶら下がっているだけです。本当に、私企業なら、原発のリスクを恐れて、原発の導入をできません。書かれた通り、国の後押しと補償があったからです。というか、無理矢理で入れられたんです。
 私は、今回の事故で、責任は経産省だから、経産省が電力事業が手を引かないといけないと考えています。前にも書きました。ある意味、電力会社が本当に民間企業にならないとダメです。ただし、事業の性格上、公共性は残ります。国の規制は最低限にして、独立の電力企業を監督、監査する団体が必要だと考えています。この団体に国の関与は認めません。政治的関与も、手が伸びないようにしないと。規制緩和をして、垂直分離を行っても、電力市場は何もうまくいかないことは、諸外国を見れば、ほぼ明らかです。さりとて、日本の政府に電力事業に関わらせてはならない。その間で、考えた結果です。
Commented by gayacoffee at 2012-06-30 21:43
常連のNさん、ありがとうございます。
電力会社とはなにか、原子力発電を今後どうするか、いやいや、将来に向けて日本のエネルギー政策をどうしていくのかを検討する機会にも関わらず、それ抜きで再稼働ということに問題の根の深さを感じます。
もたれ合いは続きそうですね。おいしいことがあるのでしょうか。
なにかにつけ、国が関わり過ぎです。関わることで業界を支配し、天下り先を作るのが省庁・官僚の姿ですね。こんなことをするために東大を優秀な成績で卒業し官庁に入ったのでしょうか。頭のいい人たちは志も高くあってほしいものです。
それが本当のエリートでしょうが。
by gayacoffee | 2012-06-30 20:32 | ガヤマスのつぶやき | Comments(2)

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