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「男のくせに‥」なき時代に

先にお断りしておきますが、決して女性を軽視する意味で書いているつもりじゃありません。

「ギャツビー」のテレビCMで、木村拓哉さんが左右の女性といっしょに懐かしいメロディー(歌詞はCM用にアレンジ)に乗って軽やかに踊りながら男性用化粧品のスプレーを顔に吹き付ける姿を見て、「キムタクは本当に絵になる男性だな」と感心しています。
同時に思うのが、最近の若い世代にとって男性用化粧品はごく普通のものになっているんだな、ということ。
当店常連の50代サラリーマンが先日、「最近の若い社員は、営業に出る前とか帰ってきたときとかに、シュッと香水みたいなものを首筋や胸に吹きかけるんですよね。汗臭いのが嫌だと言うんですよ。ロッカーには着替えのTシャツとかもちゃんと用意しているし。とにかく臭いに気を遣っていますね。我々の年代にはちょっと考えられませんけどね」とこぼしていました。
私も以前のサラリーマン時代に、男子トイレで若い男性社員が脇の下にシュッとスプレーしているのを見て、「何やってんだ」と尋ねたことがあります。彼は、常識でしょう、と言わんばかりの表情で「汗の臭いを抑えるんですよ」と答えました。

まあ、ルイ王朝期のフランス貴族も、いや日本でも平安時代の貴族たちも、化粧し香りを楽しんだ男性は歴史上いますが、同時代に生きて目の前で見てしまうと、どうしても世代間の大きなギャップを感じてなりません。

私が子供だった1960年代から70年代初めまでは、「男のくせに」という言葉がごく日常使われており、あるときは「女々しい」という女性蔑視的な使われ方もしましたが、多くは「男」としてあるべき姿に照らす際、しかも母親とか女のきょうだいとか、身近な女性から投げかけることが少なくありませんでした。
「男子たるもの泣くものではない」「男はむやみに笑うな」「男は弱い者いじめをするな」「男はうそをつくな」「男は恥を知れ」「男は困った人がいたら助けなさい」「男は出されたご飯に文句を言わず食べよ」「男は道の真ん中を歩け」などなど。
そして、かつて鹿児島の男子にとって、「クソヒッカブイ(弱虫)」と並び、最大の屈辱の言葉が「オナゴンケッサレ(女の腐った奴)」でした(女性の方、申し訳ありません)。この言葉を理由もなく同性から投げつけられると取っ組み合いのけんかになったわけです。この言葉もたびたび身近な女性から、「男子たるもの」という男の生き方を問うときに叱咤され、言われた男の子はくやしさに唇をかむのでした。同時に女の子には「女のくせに」という言葉も日常ありました。

鹿児島の「男尊女卑」のイメージは、こういう薩摩的子育てがかなり影響していると想像します。

80年代を過ぎ平成に年号が変わって、男女平等の意識が定着、教育現場でも性差による教科の差異もなくなり、最近では職場でも20代後半を過ぎた女性に対しあからさまに退職を迫るような雰囲気はなくなっています。むしろ、「こんな言葉もセクハラになるのかな」とビビる小心な中年男性が増えてきたのではないでしょうか。

総論としてこれは良いことです。性の違いでいわれなく社会的、経済的差別を受けるのは良くありません。

ただ、どうしても男性用化粧品をシュッと吹き付ける姿には違和感があります。キムタクはテレビの中の人だから絵として様になるけど、身近でこれをやられると、つい「男のくせに」と言いたくなるのです。
いや、「男のくせに」なき時代だからこそ、そう言いたくなることが増えてきました。
古い時代の人間なのでしょう、私は。古い人間は古い者らしく、これからの人生でも男性用化粧品とは縁はないでしょう。汗臭さのどこが悪いのか、と。例え加齢臭が漂うようになっても、私の場合、コーヒーの香りに包まれていればいいのです。
by gayacoffee | 2008-03-31 01:12 | ガヤマスのつぶやき | Comments(0)

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