ちょっとした気持ちの変化というのか気の迷いというか、夏の終わりから髪を伸ばしています。小・中学校の1級後輩が営む美容室で月1回ほど、毛先を整えてふくらむ髪をすいてもらいながら少しずつ伸ばして、いま耳をおおうほどに。
強いていうなら、社会人になって35年を越えましたが、散髪はずっと「耳にかからないくらいにカット」でした。それにちょっと飽きたかな、と。飽きるというのも変かな、これまで通りでも別にいいけど退屈だよなあ、と。夏にYさんと会ったせいもあるかもしれません。Yさんは定年後に伸ばし始め、いま後ろで結んでおられます。
Yさんは金融機関に長く勤めてこられ、オープン当時のうちの営業担当でした。10歳ほど年上で、コーヒーがお好き。定年退職されてからも定期的にコーヒー豆を買いに来てくださっています。
金融機関勤めのころは白いシャツに七三。「あれが窮屈で嫌でしたよ」とYさん。学生時代に戻ったかのように髪を長く伸ばして、ついにポニーテールで結べるほどに。一見、陶芸家風。
たいがいの男は散髪をする際の注文は「前と一緒で」か「前より長く」か「前より短く」じゃないでしょうか。前に聞いた話で、髪を切るとき「男は前に戻ろうとし女は変わろうとする」そうで。
私も、髪型を変えることがプラスになる仕事であれば変化を求めたかもしれませんが、どこにでも転がっている顔でもあり、ほとんど他人から関心を持たれない私の髪ゆえ、35年以上もほぼ「耳にかからないくらいのカット」で過ごしてきました。まあ、これからもそれで別に構わないんですよ、別に。
ただ、いままで通りだったことにふと飽きたというか、そんな感情がわいた。大それたことでもなく、せいぜい自分の髪ぐらいの話です。人様にご迷惑をかけるわけでもないし。
ところが、家族には不評です。大変に。「似合わない」だの「寝癖が目立つ」だの「やんかぶい(鹿児島弁)」だの。1週間ほど間を開けては、繰り返し「切れば?」と言われたり。
洗ってタオルで拭いたぼさぼさの髪を前に垂らし目を隠して、「米津!」。
ウケるかと思いきや、ブーイングでした。鏡で見ていたら彼っぽいなあと思ったんですけどね。
「何それ」だの「米津さんは声がいい」だの。ついには娘から久々に「ウザ!」。