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「どのくらい洗うのですか」との問いに答えて

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「マスター、生豆を水洗いするって、どのくらい洗うんですか?」
先日、常連のお客様Kさんから尋ねられました。
「水が透き通るまで洗っています」

と、口で説明したものの、やはり見ていただくのが分かりやすいだろう、と昨夜(9月21日)焙煎したコーヒー豆の水洗いの様子、水洗い後のハンドピック、焙煎後のハンドピックを写真でご紹介いたします。

左上の写真が水洗い1回目。洗う前に、1回目のハンドピックを済ませています。黒っぽい汚水が出ているのがお分かりでしょうか。豆種は「マンデリンG1」です。
豆の種類によって汚水の色、汚濁度も異なります。同じ「マンデリン」でも、「トバコ」はもともと豆の大きさもそろっていればハンドピックで捨てる欠点豆も少なく、水洗いも1、2回程度で済みます。
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左下の写真が、5回ほど水を換えて洗い、すっかり水が透き通った「マンデリンG1」。左上写真の豆を水洗いした後の様子です。

洗い方はお米を研ぐ要領で行っています。
お米は完全に透き通るまで洗わない方がいいと聞いたことがありますが、コーヒー豆の水洗いについても、「ザルに入れ流水を強めに流す程度でとどめる」とおっしゃるコーヒー豆屋さんもおられますし、「洗い過ぎるとコーヒー豆の中の成分が水に溶け出てしまうので軽く1、2回程度すすぐぐらいでよい」とおっしゃる方も。
中には、「水洗いする意味はない、むしろコクがなくなる」と言われるコーヒー店主さんもいらっしゃいます。
それぞれの考え方でしょう。
私は私なりに試行錯誤をしている、ということで、当店のやり方が正しいと主張するつもりはありません。
コーヒーはジャズと同じで、寺山修二さんの言葉をパクれば、自由な精神とハンドインハンド。どのように焼こうが、砂糖を入れようがミルクを入れようが、ネルで点てようがコーヒーメーカーで点てようが、飲む本人がおいしい、心が落ち着く、元気が出る、と思えればそれでいいと思います。

話がそれました。
私が、コーヒーの生豆を洗おうと思ったのは、前にも書きましたが、中野弘志さん著「コーヒー自家焙煎教本」という本を読んだのがきっかけでした。数年前、焙煎機を購入し、サラリーマン暮らしの合間に焼いていたため、特定の店で修業することもなく師匠も見つけることもなく、あれこれ自己流で試していました。
書店で本のタイトルにひかれ購入、中野さんが書く焼き上げのタイミング、味について共感を覚えつつも、最初は本の中にあった「水洗いをすると、驚くほど味がよくなる」という文にはまだ気付きませんでした。文章自体は目で見ながらも心に響いていなかったのです。
それから2年ほど経ち、何度か読んでいた「-教本」をある日、なんの気なしに再び読み返していたとき、前述の水洗いの一文がぱっと目に飛び込んできたのです。
不思議なことです。
「あっ、こんなことが書いてあったんだ」
試してみよう、とすぐに「ブラジルNo.2」を洗ってみました。今思えばよりによって、ナチュラルの「ブラジル」です。タライに入れ水をためて手でかき回すとたちまち黄土色の汚水へ。
「うわー、なんだこれは。これをこのまま焼いていたんだ、今まで」
大きな衝撃でした。以来、すべての豆を水洗いしています。
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水洗いの効果は、①豆の表面のほこりなどを洗い流し、より清潔になる、②豆表面の薄皮を洗い流せるので、焙煎機の中にたまるチャフの量が格段に減る、③1回目のハンドピックで見過ごした欠点豆を、洗うことで見つけやすくなる(右写真=水洗いをして見えてきた欠点豆。取り除きます。豆種は「ブラジルNo.2」)―が挙げられます。
もちろん、何度も当ブログで書いていますが、焙煎では200℃以上に熱を加えるので、水洗いしなくても衛生面で何の問題もないでしょう。この点は誤解しないでください。

私は、実際に初めて水洗いしたときに見た汚水が衝撃だったから続けているのです。
どう考えても洗わないより洗った方が清潔なことは確かでしょうし、そもそも焙煎機の釜の中が違ってくると、私は確信しています。
一時期、私も「もしかしたら洗い過ぎは良くないのでは」と迷い、すべての豆を2、3回のすすぎで済ませたこともありました。でも、今は「これだったら自分も飲みたい」と納得のいくまで洗うようにしています。中途半端で止めるぐらいなら最初から洗わなければいいのです。

味にどう変化、効果があるかは、まだ不明です。ただ、生豆を洗うようになって、「飲みやすいコーヒーですね」「味がすっきりしていますね」と言われるようになったことは確かです。
水洗いするとコクがなくなる、とのご指摘には感心しません。ウオッシュドのコーヒー豆は、果肉を取り除く際、収穫した豆を水に浸すはずです(現地を見たことはありませんが)。コクの成分が水に溶け出すというなら、この時点ですでに抜けてしまうのではないでしょうか。
水洗いにはさほど時間をかけず、洗った後はすぐにザルに広げて乾かします。浸しておくわけではないので、水洗いとコクがなくなることとは別問題と考えます。

水洗いした生豆を、以前は完全に乾燥させて焙煎していましたが、半年ほど前に乾きが半端なまま試しに焼いてみたところ、焼き上がりに変化はなかったため、現在は生豆の乾きにさほど神経質にならずに焼いています。
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焼き上がった豆を見ると、白っぽいままのもの、表面がしわが寄っているもの、形がおかしなものなどがぽつぽつと入っています(右写真=すべて欠点豆です。豆種は様々)。これらはコーヒーの味を悪くするので、ひとつひとつ取り除きます。焙煎後のハンドピックです。

どの豆を残し、どの豆を取り除くかは最終的には私の勘です。焼き上げのタイミング自体も、豆のつや、色などを見て、「ここだ!」と判断しているほど。勘だらけで、マニュアルがなかなか作れません。
また、この方法がベストではないはず、とも思っています。ベターを試行錯誤する日々です。そこがコーヒー焙煎のおもしろさだ、と私は夜中、ひとりでほくそ笑んでいます。

一連の作業を経たコーヒー豆を、店頭で販売したり、コーヒーを点ててお客様へお出ししています。
by gayacoffee | 2009-09-22 11:24 | 生豆を水洗いする焙煎とは | Comments(0)

鹿児島発! 生豆を水洗いする自家焙煎コーヒー店の日記


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