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ミニバブルに踊るなかれ~新幹線全線開業まで1年

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●1本のレールでつながった新幹線鹿児島ルート

今朝の新聞に、九州新幹線鹿児島ルートの博多駅-新八代駅間のレール敷設が昨日完了、これにより鹿児島中央駅-博多駅間の全257kmが1本のレールでつながった、との記事が大きく報道されています(左写真)。同時に新幹線のレールは、東海道・山陽・九州が1本となり、東京を起点に東北ともつながったことになります。
鉄道ファンとしては全線を乗り継いでみたいもの。
今後、九州新幹線鹿児島ルートは、秋ごろまでに試運転に入り、来春の全線開業が予定されているそうです。

●発展か、衰退か。新幹線の影響は?

九州新幹線全線開業は一方で懸念もあります。たびたび鹿児島で議論されることです。
「新幹線が(全線で開業で)来て、はたして鹿児島は発展するのか、衰退するのか」

一昨日のこと。常連の学生くんが「九州新幹線が全線開通すると、鹿児島はどうしようもなくなるでしょうね」と質問とも意見ともつかぬ口調で話しかけてきました。
九州新幹線で鹿児島中央駅-博多駅間は最短約1時間20分で結ばれ、さらに鹿児島中央駅-新大阪駅間も約4時間となります。
博多は九州の、いや福岡空港の利便性からアジア各国からの玄関口として、街の再開発が進みました。聞いた話ながら博多は「程よい都会、程よい田舎が同居した住みやすい街」とか。
学生くんは、ショッピングなどで鹿児島の消費者がどっと福岡へ出かけるようになる、というのです。交通アクセスが良くなると、大きな街が商圏を広げ、周辺の地方都市の消費者を食ってしまい、地方都市は縮小する、との見方です。

「どうだろう? 福岡を私は知らないからどれほどの魅力がある街か知らないから明確には言えないけど、福岡に行きたい人はすでに高速バスなどで行っているよ。福岡がもし“ミニ東京”であれば、いつか早いうちに飽きられ、消費者は本物の『東京』を目指すんじゃないかな」
東京にしかない売っていないブランドもあると聞きます。特に若い女性のあくなき物質欲を次から次へと満たしえるのは東京しかないでしょう。大スターや歌舞伎の公演などは九州では福岡のみ、という現象はすでに始まっています。10年以上前から鹿児島からの福岡流出は始まっています。
九州新幹線が全線開業することで加速化する可能性はあるにしても、すでに起こっている現象なのです。
むしろ、私は鹿児島に置いていた営業所を大手企業が引き上げる動きを懸念します。
「鹿児島-福岡間が短縮されることで影響が出るのが大手企業の営業所閉鎖だろうね。これまで鹿児島に置いていた営業拠点のコストを落とし、福岡あるいは熊本の営業所から営業マンが出張でやってくるパターンが増えるんじゃないかな。ビジネスホテルがやたら鹿児島市内に建っているのはそれをにらんでのことでは?」
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ビジネスホテルの建設が目立つようになったのはここ数年です。特に、鹿児島中央駅周辺で建設、あるいは建設予定があります。※右写真は、2月に改装したJR鹿児島中央駅構内

●新幹線効果で地価も“健闘”

この18日に公表された地価公示(今年1月1日時点)では、全国的に地価の下落が止まらず、九州・沖縄地区でも「上昇地点ゼロ」となる中、鹿児島県内では鹿児島中央駅周辺の2カ所の商業地が横ばい、と“健闘”。住宅地でも、周辺開発が進むJR熊本駅に最も近い調査地点が横ばいとなっています。
読売新聞19日付け(西部版)は「新幹線開通への期待感が地価を下支えする形となった」と伝えています。
ただ、こうした期待感は、“祭り”までは高まるものの、終わった後には一層寂寥感が漂うもの。
読売新聞は同じ記事の中で、「期待先行で投資が過熱したJR博多駅一帯は景気後退の影響を受け15%程度、値下がりした」と指摘しています。
全国的な公示地価の下落は日本経済の低迷、足腰の弱さを映し出す鏡と言ってよいでしょう。
全国で「横ばい」「上昇」となった調査地点は、「地下鉄桜通線の新駅開業前でJR名古屋駅と結ばれ利便性が高まる」(名古屋市緑区)、「東海道新幹線・三島駅近くで、県立静岡がんセンターを核に先端産業の企業誘致で人口が増加」(静岡県長泉町)と、交通アクセスが要因となっている点も特徴です。

●仕掛け人に踊らされない

九州新幹線全線開業まであと1年。こうしたイベント性の高い大型事業に必ずと言ってよいほど群がるのが“プランナーだの“イベントクリエーター”だの“〇〇プロデューサー”だのカタカナ肩書きの人々です。彼らは、全国を行脚し、昨年は東北、今年は九州、来年は北陸…といったように各地でブームを仕掛けるよう提案していきます。

分かりやすいのが、NHK大河ドラマと連動した観光ブーム。今年は「龍馬伝」で、坂本龍馬関連の地、特に観光復興に取り組む長崎では官民一体で観光産業の振興を図っているようです。
何らかのブームを地域経済の浮揚の起爆剤にしたい-それ自体は問題ないでしょうが、困ったことは起爆剤が起爆しても連鎖して火が付くまでの産業浮揚策が取れないまま、ブームが過ぎてしまうという現実です。
私の知人がはいた名言。
ブームは必ず去る
そうです。「篤姫」ブームで沸いた鹿児島の観光産業もその後の低迷で苦悩しています。「篤姫」を起爆剤にして連鎖爆発が起こらなかったのです。

ブームには仕掛け人がいます。前述のカタカナ肩書きの人々は一種の“役者”。大企業、旅行会社、マスコミ、官公庁らを大手広告代理店などが取りまとめ、テレビや講演会で名を売るカタカナ肩書きの人々を起用して、イベントとして仕掛けていく手法です。
篤姫ブームの際も、鹿児島で1カ月も暮らしたこともない、顔の知られた“芸人”的評論家・イベンターらが、わざわざテレビ出演で忙しい合間を縫って鹿児島に来て、ありがたくも「鹿児島の将来」を語ってくれたようです(私は聞いていません)。これらの活動はボランティアではありません。
講演料は地元自治体やら企業やらが支払ったのでしょう。しかも、「鹿児島」を「金沢」や「仙台」に変えても、話が通るような、実にご立派な講演内容に、です。

ブーム仕掛け人らは、仕掛けること自体が仕事であり、その後の結果に責任は持ちません。なぜなら、次のブームを作らないと自分たちの仕事がなくなるからです。
で、仕掛け人らが仕掛ける街には共通項があります。
①元々眠った観光資源がある②その資源は全国に通用する価値を持っている③ほどほどの地方都市である-です。そして、ほどほどの地方都市は「ミニ東京」化しています。ゆえに、仕掛け人らが「鹿児島」を「金沢」あるいは「仙台」に変えても、マニュアルとして通用するのです。
「ミニ東京」化しない地方都市に対して仕掛け人はイベントを持ち込みません。なぜなら、お金の匂いがしないからです。あくまでも仕掛けを持ち込むのは、ほどほどにお金(財源)がある街に対してです。

「あの有名な〇〇さんが鹿児島の将来を語ってくれた」などと感動したりありがたがったりするのは個人の自由ですが、仕掛け人が将来を語るのも自由、というか勝手であって、彼らがそれを実行するわけではありません。当たり前のことながら、実行するのは地元の人間です。
彼らは来年は別の土地で将来を語っていることでしょう。
もうひとつ、わが知人の名言。
ブームは作られる
Commented by 匿名 at 2010-03-23 21:24 x
新幹線開業によるストロー化現象ですね。長野新幹線でそのことがよく言われますね。ただ、誰もストロー化を調べたり、研究しようとはしないようです。県からも嫌われるだけですし、それこそ、そんなことを書いても、「うまみ」がないですから。大学にいる先生以外は、それについては、書けませんね。
 ストロー化もありますが、在来線の負担(肥薩おれんじ鉄道)も含めて、県も国や一部の政治家に踊らされずに、冷静に、新幹線のマイナス部分もできるだけ調べて、県民に公表して、「それでも、新幹線がほしいですか」と問うべきだったと思います。極一部の良心的な政治家も支えるでしょうが、それは、日本では、本来は良心的官僚が影でそのような政治家を支えて、すべきことだったんです。日本に、良心的官僚がいなくなったとまでは言いませんが、戦後の成長の時代を支えた時から考えると、激減したことは否めません。
 鹿児島に新幹線が来て、鹿児島が発展すると、こんな時代でも、失敗例が長野新幹線や東北新幹線にもあるにも関わらず、未だに、そんな幻想をもし持っていたら、それは、あまりにも、お気楽過ぎるでしょう。でも、残念ながら、そんな方が多数おられるようです。

Commented by gayacoffee at 2010-03-23 22:26
匿名さん、ありがとうございます。
「九州新幹線」なるものは一体だれが欲しいと言い出したのでしょうか。地元? JR(旧国鉄)? 政治家? 中央官僚? 財界?
ただ、1年後に全線開通となった今、「ではどうする」という課題を私たちは突き付けられています。
確かに鹿児島から福岡までが1時間半弱で行けるようになります。それをどう生かすのか、でしょうが…。
当店的には、福岡で地道に自家焙煎をやっておられるコーヒー店を日帰りで訪ねられるようになります。気分的に近くなりました。勉強のために利用はできそうです。でもあわただしくもあります。
福岡、または大阪から鹿児島へ来る人がどの程度いるのか、その方々が(来るとすれば)何を求めるか、そういう調査はなされているのでしょうか。(続く)
Commented by gayacoffee at 2010-03-23 22:27
(続きです)
イベント性も起爆剤ではいいでしょうけど、息の長い地域浮揚を考えるとき、まずは地元の人間が地元を知ることでは?
黎明館の刀剣コーナーのみすぼらしさを見るに、「武の国・薩摩」は看板倒れの感がします。幕末マニアのために街づくりを長~い時間をかけて築くとか。司馬遼太郎さんのファンなら一度は鹿児島を訪れたいはず。でも来て愕然でしょうね。
もうひとつ。ホテル・飲食店の接客、トイレの掃除など今日からできることもたくさんあるはずです。「日本一トイレがきれいな街」「体の不自由な方が日本一暮らしやすい街」というのもいいですね。コツコツとした街づくりです。
中央のおエライさんの提言も勉強にはなるでしょうが、地元の大学の各種専門家の先生方、研究家らの言葉に耳を傾けたいと、私は思います
by gayacoffee | 2010-03-23 20:51 | ガヤマスのつぶやき | Comments(3)

鹿児島発! 生豆を水洗いする自家焙煎コーヒー店の日記


by gayacoffee