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刀を持つ・抜く・斬る・重心移動~すべて関節を使う

昨日6月16日の道場での居合稽古は、久しぶりとのことで、基本の基本を道場の館長T先生にご指導いただきました。
素振りをしていた私は、まず柄の持ち方が悪いと先生から注意を受けました。

居合道は、真剣で斬ることを前提にした武道です。刀の柄の断面は楕円形で、剣道で使う竹刀と大きく異なります。一刀のもとに斬るには、極めて合理的・効率的な体の働きが必要で、刀(真剣・模擬刀問わず)と竹刀の柄の持ち方はおのずと異なるわけです。

柄の持ち方については、「無双直伝英信流居合道」によると、「手の裡(うち)の心持は、両手首を軽く折り、左右の小指および無名指(薬指)を絞り込み、中指の基部を締め、食指(人差し指)じゃ軽く屈め、拇指の基部にて柄の上よりわずかに押す心持にて柄を握る事(いわゆる茶巾を絞る要領にて)」「斬撃する時は、その斬り付けたる瞬間、両手の力をひとしく十分握り絞めて行い、斬撃の後、刀を復する時または刀を構えたる時は、手の裡やわらかに力を入れる事なく、いわゆる左手はから傘をさしたる心、右手は卵を握りたる心にて柄をとる事」とあります。

T先生は「握る」ではなく「持つ」と表現されます。刀の柄に触れる指は、それぞれ関節部分で軽く押さえるようにするのであり、小指と薬指を締める際に重要なのが手首の関節だ、とも。
関節で柄を持ち、関節で絞るのです。

続いて、「斬り下ろし」。
腕で刀を振り下ろしている、との注意です。
T先生はこうおっしゃいます。
「30数年居合を続けてきて分かってきたのが、刀は腕で斬ろうとするのではなく、肩で斬る、もっと言えば、股関節で斬るということだね」
股関節には上半身と下半身をつなぐインナーマッスルがあります。これを生かし、股関節からの反射指令が肩に伝わって、肩関節で斬り下ろす―これがごく自然な体の働きなのです。「丹田(へそ下)に力をためる」という古くからの教えも同様のことでしょうか。刀を上段から振り下ろすという動作は、つい上半身だけを使いがちになりますが、実際は下半身、その中核である股関節が働くことで正しい形となるのです。
腕で斬り下ろそうとすると、刃筋を通すために左右の腕のバランスを考えて振ります。それは頭=脳からの指令で、腕の筋肉を使ってしまいます。疲労も早まります。
肩(肩関節)で斬り下ろすと、腕に余計な力をかけないため、自然に左右の腕のバランスが取れて結果的に刃筋も通り、疲れにくくなります。

最後は「抜き付け」でした。
右手を下から柄にかけすーっと前に出し刀を抜きながら、鞘を持つ左手を反時計回りに45度まで傾け、切っ先3寸ほど残したところで爆発的に右手首をひねりつつ鞘を持つ左手を後ろへ引くことで切っ先が弾き出され、敵の顔面あたりを横一文字に斬る-。
1本目「前」という形は、居合の基本であり真髄とされます。
居合は鞘の中に「勝ち」を含むとされ、抜き付けこそが居合そのものなのです。刀を抜いた後は、居合ではなく、「立合」(たちあい)となります。刀を抜いて構えて打ち合う「立合」に対する「居合」です。つまり「居合」とは「日常」を指します。
さて、この「抜き付け」でもやはり関節がポイントでした。
鯉口(鞘の口)から切っ先が弾き出るとき左45度に傾いている刀身が、対面にいる敵の向かって左側の肩に到達する際には横一文字になっています。それは手首をひねり小指と薬指をぐっと締めながら斬り付けるからです。
手首-関節です。肩の関節も働きます。右手は右へ、同時に左手は鞘を引いて左へ。

先生のご指導のポイントは、すべて「関節を使う」でした。
このほか、足さばきでは股関節、ひざの関節、足首の関節、足の指の関節が連動して動きます。
筋肉こそパワーと思っていた私ですが、実は関節こそがパワーの源だったのですね。そう言えば、筋肉は関節を動かすためにあるわけで、そもそもは関節が要(かなめ)なのだと知りました。
by gayacoffee | 2010-06-17 16:40 | 居合道・日本刀 | Comments(0)

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