人気ブログランキング | 話題のタグを見る

波平行安伝説 笹貫井戸~東谷山1丁目

波平行安伝説 笹貫井戸~東谷山1丁目_e0130185_18491166.jpg
このところ、波平刀匠史跡めぐりが続く「谷山散策」です。今回の史跡は、「笹貫」の地名の由来となった伝説に関わる井戸です。
10月31日付け当ブログ・カテゴリ「谷山散策」で紹介した「波之平刀匠遺蹟」の井戸とは別です。「波之平刀匠遺蹟」から北東へ200mほど道路を進んだ鹿児島市東谷山1丁目の旧道の傍らにあるのが「笹貫井戸」です。

井戸にまつわる伝説は、応永年間と言いますから西暦1394年ごろ、今から600年以上前にさかのぼります。
当時の波平行安(行安は何代もいる)が「末代まで伝えられる名刀を作りたい。仕事にかかるからどんなことがあっても鍛冶場をのぞいてはならない」と妻に堅く言い残して鍛冶場に入りました。何日も経って鎚の音が聞こえないため不安になった妻は鍛冶場の戸を開けてしまいました。ちょうど茎(なかご)を仕上げるという大切な日だったことから行安は大変に怒り、仕上げの途中だった刀を鍛冶場の裏の竹やぶに捨ててしまいました。
それからです。夜な夜な怪しい光が竹やぶから発せられるというので、人々が恐れ竹やぶのそばを通らなくなったそうです。
波平行安伝説 笹貫井戸~東谷山1丁目_e0130185_1849511.jpg
このままではいけない、と村人が竹やぶを調べてみると、切っ先を空に向けた刀が垂直に突っ立っていました。行安が投げ捨てた刀でした。
見ると、いく枚もの笹の枯葉が刀に突き刺さっているではありませんか。ひらひらと落ちてきた笹の枯葉がその刀の切っ先に当たるとすーっと葉を貫いていたのでした。「笹貫」の由来です。
村人は、怪しい光を放っていたのはこの刀に違いないと、海へ投げ込みました。しかし今度は海から光が差し始めたのです。村人は刀を海から引き上げ、始末に困ってしまいました。
その話を聞いたのが島津の分家の樺山音久でした。見ると大変な名刀です。もらい受けて島津本家に献上したものの、そこでも怪しげなことが続くことからこの刀は樺山家に戻され、以来同家に伝わることとなりました。刀に「笹貫」の号が付けられました。
一帯の地名にもなり、現在もバス停、電停などに名前を残しています。

名刀「笹貫」を打った行安が焼き刃渡しに使ったといわれるのが「波之平刀匠 笹貫井戸」です。石碑は皇紀2600年記念で谷山町史蹟顕彰会が建立したもので、行安はこの井戸の背後に居住していたと伝わります。
※上記写真2枚は愛刀家Tさん撮影です。また、伝説は「薩摩の刀と鐔」(著者・福永酔剣氏)を参考にしました
Commented by 八鹿江 at 2011-01-07 21:28 x
波平の伝説と言うと、日本むかし話のなかに「鬼が鍛冶屋の娘を貰う条件に一夜にして千本の刀を作った云々」というものがあって、それが波平であったように記憶しています。これは北陸の話でしたから、当時は波平の刀は鬼が打ったが如きと評判を取るほど名声を持っていたのでしょうかね。
Commented by gayacoffee at 2011-01-07 22:19
八鹿江さん、ありがとうございます。
「薩摩の刀と鐔」で著者・福永酔剣氏は「大蛇」の化身として行安の伝説を紹介しておられます。場所は越後・糸魚川。
波平は長い歴史の中で、名刀もあれば激しい戦(いくさ)の中では大量の数打ち物も打たれており、実戦向きのためか、現代では美術品としてはさほどの評価を受けていないようです。
特筆すべきは、平安の貴族文化華やかな時代に都から遠く離れた薩摩に波平一類が作刀をし始め、廃刀令までおよそ1000年続いたことでしょう。なぜ薩摩に? という疑問に答える研究はまだありませんが。
「源平盛衰記」の一の谷の戦の場面に、猪俣近平六則綱の帯びていた太刀が「彼刀は薩摩国住浪(ママ)平造の一物なり」と出てくるそうです(「薩摩の刀と鐔」P8)。当時、波平の刀は有名だったことがうかがえます。
Commented by 笹貫 at 2011-02-20 00:08 x
嫁いだ先が笹貫の姓です。 3代続けて関西ですが、義父いわく辿れば鹿児島と。 一昨年 夫婦で鹿児島旅行の際に笹貫を尋ねましたが、この井戸は知りませんでした!
Commented by gayacoffee at 2011-02-20 11:54
笹貫さん、ありがとうございます。
そうですか、おそらくご主人のご先祖はこの地の出なのでしょうね。波平刀匠は、現在の東谷山に広く住んで刀を打ったようで、この「笹貫井戸」のほか、波平(地名)の井戸があります。
by gayacoffee | 2010-12-18 19:34 | 谷山散策 | Comments(4)

鹿児島発! 生豆を水洗いする自家焙煎コーヒー店の日記


by gayacoffee