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魚の口から釣り針。これをどう受け取るか

常連の方が以前、小料理屋で尾頭付きの魚を頼んで仲間と飲み食いしていると、その魚の口に何か引っかかっているのが見えたそうです。
「こりゃ、ないやろかいな(これは何だろうか)?」
手で引っこ抜くと、大きな釣り針でした。
「釣り針じゃった」
小料理屋のおカミさんがあわてて席に駆け寄り、「申し訳ありません」と何度も平謝り。
この常連の方らは、大笑いしながら「よかど、よかど(いいよ、いいよ)。釣り針で上げた魚じゃっちゅう証拠じゃ。縁起がよかがな。網ですくった養殖モノでもなかし(ないし)、なあ」。
さらに酒盛りは弾んだそうです。

なかなか微笑ましい話です。魚の口から出てきた釣り針をも肴(さかな)にして焼酎を楽しむ、陽気なおとうさんたちの姿が目に浮かびます。

最近、よく食品に異物が混入していた、と新聞、テレビでニュースになります。もちろん学校給食に金属片が入っていたりすると子供は飲みこむ危険性があるため要注意でしょうし、冷凍ギョウザ事件などは「犯罪」とも言えるでしょう。

以前、このブログでも紹介しましたが、今年9月29日付けで鹿児島市は同市食品衛生法施行条例を改定しました。ポイントは「営業者(飲食店など営む者)の義務として健康被害などに関する情報が消費者からあった場合にすみやかに保健所長へ報告する」ことです。
さまざまな隠ぺい、偽装、改ざんなどが社会問題になっただけに、これは当然でしょう。
施行条例の改正では、「健康被害によるものなのかは医師の診断結果に基づく」としている点も合理的です。

ただ、ひとつ疑問。追加規定の中で保健所長にすみやかに報告する事項としてある「及び法に違反する食品等に関する情報」と定められ、それが「誤表示」は分かるとして、「異物混入」も対象となっている点です。
そうなると、文頭に紹介したなじみの小料理店とおとうさんとの微笑ましい話も、保健所長へ届け出なければならなくなるのでしょうか。
魚の口から出てきた釣り針を「縁起がいい」と広い器量で焼酎の肴にする社会と、「異物混入だからすぐに保健所へ届けます」という社会と、どちらに住みたいか…。言わずと知れたこと。

「異物混入」は、自家焙煎コーヒー店も無関係ではありません。
生豆をハンドピックしていると小石やくぎ、ほかの穀物などがよく見つかります(当ブログで時々ご紹介済み)。当店ではハンドピックは生豆で1回、焙煎後にもう1回の最低2回行っています。さらに当店では生豆を水洗いしているため、洗う過程で異物を発見することもたまにあります。
ただ、あくまでも私という人間の行うこと。「絶対」はありえません。
いままでのところお客様から「こんな物が入っていたよ」などのご連絡はないものの、この先私が将来にわたり、コーヒー豆の中に小石などが混入したコーヒー豆をお客様へ絶対に販売しない、とは言い切れません。未然に防ぐ努力は続けます。しかし完璧を保証する勇気は私にはありません。
また、コーヒー豆の場合、小粒の石が健康に被害を及ぼすか、ということもあります。こんな情報も保健所長へ逐次報告する必要があるのか疑問です。「オカミ」にいちいちこんなことまで報告しなければならないのでしょうか。役人とは一体何様なのでしょうか。
政府、地方自治体とも財政難です。巧妙に増税を工作し年金の支払いを先送りしようと画策しているようですが、その前に役人の数を減らしても回る程度に事務量および経費を削り、一方で社会保障費など必要な財源は確保しないと、この国は借金まみれ重税でお先真っ暗になりますよ。

「役人は自ら仕事をつくる」とかいう意味のことわざを聞いたことがあります。
by gayacoffee | 2008-12-05 14:20 | ガヤマスのつぶやき | Comments(0)

鹿児島発! 生豆を水洗いする自家焙煎コーヒー店の日記


by gayacoffee