「それにしても、よく書いてるね」
このブログを見ている知人が来店するなり、一言。
「ほぼ毎日更新」を自分に課しているので、とにかく書いています。
「ブログを作ったけど書くのに時間がかかってね…」と知人が続けます。パソコンに向かって、あれこれ考えながら書いていると2時間、3時間あっという間に過ぎて夜中になる、と言うのです。
私は、20年ほど編集記者を職業としてきました。その経験から、悩めるブロガーのお役に立てれば、と文章書きのコツを綴ってみます。「作文」が苦手、という学生さんにも少しためになるかもしれません。
1回目は「読み手の心をつかむ」です。
この文章講座は、あくまでも「他人」に読んでもらう文章を前提とします。自分のためだけなら、メモでも十分です。「伝える」文章のための講座です。
「伝える」には、まず読んでもらうことが大切です。現代人は忙しいのです。自分の興味を満たしそうか、損しないか、得するか、感動するか…とにかく関係ありそうかどうか、読み手は一瞬で判断し、自分に関係なさそうなら読みません。
つまり、文章は出だしがポイントです。
私が駆け出しのころはまだ、原稿用紙に鉛筆で書く時代でした。書いては消し、また書いて、また消して、と短い記事を2時間もかけ、やっと書き上げて原稿を編集長に見せると、いきなりハサミを取り出し、私の書いた原稿用紙を段落ごとに縦に切り始めました。
「あのな、新聞記事は出だしが大事なんだ。キミの原稿は、だらだらあったことを順番に書いているだけだ。こんな原稿なんか、読者は最後まで読んではくれない。最初で読者の心をグイとつかなまきゃ、ダメなんだよ」
編集長は、段落ごとに切った原稿用紙の順番を並び変えました。
「こうすれば、ちょっとは記事らしくなるだろう。キミが後ろで書いていたことを前に持ってくるだけで記事になるんだ。最初で結論を書け!」
最初の段落で結論を書く-これは新聞記事の特徴です。
今日の新聞を見てください。はじめの段落に、事件・事故、出来事の主要な「結論」が盛り込んであるはずです。そしてそれが見出しにもなっていますね。
新聞に読者が求めるのは、自分に興味のあるニュースです。新聞を手に取ると、まず見出しか写真が目に入ります。全国紙の見出しに「鹿児島」とあると、「何々」とつい読んでしまいます。関係のある企業名が見出しに取ってあると必ず読みます。
見出しは、その記事の「結論」=最初の段落から取られます。最初の段落には、その記事の最も重要なこと=エキスが詰まっています。読者にこれを伝えたい、という記者の思いが込められているのです。
大きな事件・事故が起こったら、限られた紙面にすべての原稿を載せることはできませんので、ニュース性の小さな記事は次々に弾き飛ばされ、または短く削られます。短く削っても記事として成立するよう、最初の段落で結論を書き、順に詳細や背景を加えていくという独特の文章スタイルが定着したわけです。
「結論」を文頭に持ってくる新聞の文章スタイルは極端な例かもしれませんが、ブログにせよ、作文にせよ、読み手の心をつかめるのは、文章の始めです。
「そんなこと分かっているけど、それが浮かばない」と言う方。
便利で簡単な手法があります。会話=カギカッコです。
私がよく使う手で、このブログ記事の文頭もこのパターンですが、多くの読み手がいつも思っている言葉をカギカッコで書き始めると、読み手に親近感が湧きます。リアルでもあります。まるでその情景が目に浮かぶようですね。多くの読み手が思っていること、というのが重要です。